「何か食べたい物ありますか?」


匠さんが地下キッチンスタジオの鍵を閉めながら聞いてきた。


「……お魚…和食が食べたいです。」


しばらく考えてから言った。


「和食ですか、僕のおすすめのお店でよろしいですか?」


「はいっ。」


そのまま歩いて匠さんのおすすめだというお店へと向かう。


太陽が沈んだこの時間は、昼間よりも大分冷えていた。


「だいぶ冷えてきましたね。新井さん、寒くありませんか?よろしければこれを。」


そう言って匠さんは着ていたジャケットを私に差し出す。


「いえ、大丈夫ですから!」


ジャケットを借りるのは申し訳なく、断るが匠さんは私にジャケットを肩に掛けてくれる。


「いいえ、風邪などひかれたら大変です。着ていて下さい。」


そんな匠さんにそれ以上何も言えず、ジャケットの袖に腕を通す。


「すみません、ありがとうございます。」