「桜。」 柔らかい風に紛れて私を呼ぶ優しい声がした。 優しい? 優しいとは少し違う。 低くうめくような声。 「れ、憐。……っ」 いつから? いつからそこにいたの? まさか……! 「悪いな、俺も最初からいたんだよ。別に聞くつもりなかった……」 誤っているようには見えない。 寧ろ脱力した笑みを浮かべた。