本当は。



別れなんて早々に告げれば良かった。


皆が恐れる程の悪い人でもないと付き合い始めて分かっていた。


ただ勘違いだと言えば良かっただけのこと。



だけどいつからだろうか。
もう少し、近くで観察していたいと思ったのは。居心地が良いと思ってしまったのは。




私がこんな乙女的な思考を抱くなんてなぁ…




いつの間にか、笹原晶は私の中に入り込んでいたらしい。



深く深く。
けれど確実に。
一歩ずつ。




困らされてばかりだと思っていたのは彼の存在が大きかったせい。




あぁ、今思えば。




手繋ぎもキスも抱擁も全部、嫌じゃなかった。




「嫌いじゃ、なかったよ…守…」