「もしかして、唇だと思ってた?」
真純はハッとして、思い切り首をブンブンと横に振った。
「思ってない思ってない!」
本当は思っていた。
そもそもキスと言われれば、そう思うのが普通だろう。
シンヤは手首を掴んだまま、もう片方の手を離し、その手を真純の頬に添えた。
まじまじと顔を覗き込んで、からかうように言う。
「顔、赤いよ。照れてる? 僕が犬なら、真純さんは猫だよね。本当は優しいのに、気まぐれで素っ気なくて、素直じゃないっていうか」
「うるさい!」
真純の罵声を無視して、シンヤは顔を上向かせると、グッと顔を近付けてきた。



