夕方になっても、夜になってもシンヤは帰ってこなかった。
 荷物は部屋に置いたままだ。
 出て行ったわけではないらしい。

 真純は苛々しながら、何度もリビング前のテラスに出ては、タバコを吸いながら外を窺った。

 とうとう真夜中になったが、それでもシンヤは帰らない。

 家で食事を摂ると言ったシンヤのために、用意した夕食はすっかり冷め切ってしまった。

 それも苛々の原因だが、携帯電話の番号もメールアドレスも教えてあるのに、連絡のひとつも寄越さない、いい加減さに苛ついた。

 だが時間が経つにつれて、心配にもなってきた。
 もしかして連絡のできない状態にあるのではないだろうか。
 事故に遭って、病院に担ぎ込まれているとか。

 苛立ちと心配を抱えたまま、真純はリビングのソファに寝転んで、見るともなしに深夜番組のチャンネルをパラパラ替えたり、本をパラパラめくったりした。

 しばらくそうしていると、玄関のチャイムがけたたましく鳴った。
 こんな真夜中に来客などあろうはずがない。