辺奈商事本社ビルの二階にあるカフェに入ると、すでに瑞希が待っていた。
真純の姿を認めると、軽く手を振る。
真純はコーヒーを注文し、それを持って瑞希の元へ向かった。
「ごめん。子犬にエサをやってたら遅くなっちゃった」
真純が言い訳をしながら向かいの椅子に座ると、瑞希が興味深そうに尋ねた。
「あら、犬を飼い始めたの?」
「うん。ゆうべ拾ったの。といっても人間の男なんだけど」
「男?!」
驚いて大声を上げる瑞希を、真純は慌てて制する。
「声でかいよ」
「だって、あんたと男って結びつかないんだもん」
「だから、そういうんじゃないって」



