真純は苦笑しながらも、あまり本気で笑う事もできない。
 実際にハルコは、ネットワークを通して全世界のコンピュータを操る事ができる。
 命令されれば、軍事基地のコンピュータを操って世界中を破壊する事も可能だろう。

 シンヤは少し微笑んで、真純に視線を向けた。


「真純さんの言うとおりだね。ハルコは死んでいない。ただ記憶喪失になってるみたいだ」


 ハルコは経験や学習を学習用記憶領域に蓄積し、それを処理判断の材料にしている。

 ダッシュのウィルスはこの領域をロックし、ハルコの判断力を奪うもののようだ。

 シンヤの推測では、今ハルコは全ての学習用記憶領域をロックされ、自分で判断できない状態にあるらしい。

 領域がロックされていては、経験を記録する事もできないので、常に生まれたての状態なのだ。


「じゃあ、ハルコに命令すれば? ビルの電源を解放するように、とか」