今日はもう終わりなのだろう。
 てっきりそうだと思ったが、シンヤは真純の前のパソコンに別のツールを立ち上げ何かを入力している。


「今度は何するの?」
「課長に頼まれてるんだ。もう一度ダッシュをおびき出してデータを入手してくれって」


 シンヤが言うには、瑞希はすでにダッシュのアクセス元を突き止めているらしい。
 場所は大学の工学部研究室だという。

 ハルコに仕掛けられたウィルスの性質から、ダッシュがそこの関係者である可能性は高い。

 ハルコの自律思考エンジンの理論は、瑞希の博士論文のテーマだった。
 これで博士号を取ったので、論文は外国の科学雑誌に掲載された。
 つまり英語が読めるなら、誰でも閲覧できるのだ。

 ただ、それを読み解き件のウィルスを作成するには、それなりの工学知識が必要になる。
 工学部に籍を置く研究者なら、可能だろう。

 だがアクセス元が踏み台にされていた事も考えられる。
 それでもう一度確認のためにアクセスデータを入手する事にしたらしい。