本来ならハルコの挙動を監視するシステムが作動するはずだが、このシステムを搭載したコンピュータも外からの命令を受け付けなくなっている。

 ハルコのネットワーク管理は、このコンピュータが行っていた。
 おそらくハルコの傀儡(かいらい)になってしまったのだろう。

 それどころか社内のネットワークに接続されたコンピュータすべても、ハルコの支配下に落ちたとみて間違いない。

 そして同時に、インターネットに接続された全国の、全世界のコンピュータをハルコは操ることが可能なのだ。

 話を聞いて、真純は身震いした。
 以前瑞希と「頭のよすぎるコンピュータって困りものだ」と冗談交じりに話した事はあるが、頭のよすぎるコンピュータが言うことを聞かなくなったら更に質が悪い。

 今のところハルコに動きはないらしい。
 シンヤの偽物——ダッシュが、クリスマスまで待ってやると言ったからかもしれないが、それも楽観してはいられない。


「ハルコを停止させなきゃならない」
「電源を切れば?」
「すぐに自家発電が作動するよ。それに電源をハルコに押さえられてて切れないらしい」


 配電室は電子ロックになっている。
 それをハルコに押さえられたらしい。
 手動で開閉できる鍵はあるが、電子ロックが停止しているか異常がある場合にしか使用できないという。


「じゃあ、どうするの?」
「ハルコにサイバー攻撃を仕掛ける」