シンヤは手を休めて説明してくれた。

 ばれないようにハッキングしようとすると、色々と複雑な手順を踏まなければならない。
 毎回同じ手順を踏んでいては、時間もかかるしその分見つかってしまう危険性も高くなる。
 そこで手順を簡略化して次回からは短時間で侵入できるように、こっそり裏口を開けておくのだという。
 それがバックドアだ。

 バックドアを仕込んだマシンは簡単に侵入できるので、別のマシンに侵入する時踏み台として使えば、接続元をごまかす工作にも使える。

 シンヤはハッカーをしていた時、侵入したマシンにはすべてバックドアを仕込んだらしい。
 それを一覧表にして残しておいたのだ。
 その数、五百以上。


「え……それ全部、ひとつずつ調べてたの?」
「うん。でももうすぐ終わるよ」
「で、どうだったの?」
「ほとんど残ってた。充分使えるくらい。中小企業が多いからね。案外セキュリティ甘いんだよ」