「じゃあ、私仕事するから」


 そう言って部屋を出ようとした時、シンヤがまたクスリと笑った。


「何?」
「さっき何か思い出してた? 顔、真っ赤だったよ」


 一瞬にして顔に血が集まってくる。
 真純はシンヤに背を向け、慌てて部屋を出ようとした。
 それをシンヤが後ろから抱きしめた。


「もう、かわいいなぁ」
「からかわないで!」


 照れくさくて怒る真純に、シンヤは笑いながら言う。


「からかってないよ。本当にかわいいんだもん」


 そして声を潜めて、耳元で囁いた。


「あの時は、もっとかわいいよ」
「余計なこと言わなくていい!」


 シンヤの手をピシャリと叩いて振りほどき、真純は今度こそ部屋を出た。
 部屋を出る間際、シンヤがおもしろそうに笑っていた。

 やはり手玉に取られている。
 今度はちょっと悔しかった。