「夜食が真純さんなら、喜んで頂くけど?」
「何言ってるの! ネット見るのは仕事なんでしょ?」


 案の定、真純は進弥の腕の中から逃れようともがいた。


「じゃあ、おやつだけちょうだい」


 もがく真純を腕の中に押さえ込んで、強引に口づける。
 すぐに真純はおとなしくなった。

 少しして腕の力を緩めると、真純は俯いたまま「もう!」とふてくされたように一言発して、進弥から離れた。

 そして進弥の飲み干したコーヒーカップを持って、リビングを出て行った。

 真純を抱いて一緒に眠れないのは、本当のところ進弥の方が寂しく思っている。
 けれど真純には真純の仕事と生活があるのだから、自分の時間に合わせて夜更かしさせるのは心苦しい。

 それよりも、アンダーグラウンドをうろついたり、ハッキングをしたりしている自分の暗黒面を、真純に見られたくないという思いが一番大きかった。