「唇じゃなくてもいいよ。ほっぺでも手でも」
「……うん。それならいい」


 真純はホッと息をつく。
 奥手な真純にシンヤが最大限気を遣ってくれているのが嬉しくて、思わず彼の腕にしがみついた。


「だから、そういうかわいい事しないで」


 不満そうにそう言うと、シンヤは真純の手をほどき、肩を抱き寄せた。

 見上げる真純を見つめて、シンヤは微笑む。


「我慢できなくなるでしょ?」


 そして唐突に口づけた。

 今度のキスは、いつものように唐突だけど、いつものように優しくて甘かった。




(完)