キッチンで夕食の支度をしていると、玄関でコトリと音がした。
そろそろシンヤが帰ってくる時間だか、シンヤはいつも大声で挨拶しながら、久しぶりに主人に会った子犬のようにバタバタと駆け込んでくるので、家のどこにいてもすぐ分かる。
シンヤにしては静かすぎるので、何か落ちたのかと思い、真純はキッチンを出て玄関の様子を見に向かった。
リビングを素通りして玄関へ続く廊下の扉を開けた途端、目の前にいたシンヤにぶつかりそうになった。
思わず声を上げて一歩退く。
さっきの物音はシンヤだったようだ。
シンヤも驚いたようで、一瞬目を見張ったものの、すぐに真顔に戻って、じっと真純を見つめた。
「びっくりした。おかえり」
シンヤは真純の声にも反応がなく、ただじっと見つめている。
様子がおかしい。
冬に風邪をひいて熱を出した時でも、ここまでおとなしくはなかった。



