「かわいそうだったわ。なんであなたハッカーなのよって恨んだわよ。だってあの子にとって初めて出来た男なのよ、あなた」

「へ?」


 初めてだとは聞いていたが、その段階から初めてだったとは夢にも思っていなかった。


「小中学校の頃は知らないけど、あの子の性格からして、多分ないわね」


 呆然とする進弥を気にも留めず、課長はひとり納得して頷いている。


「まぁ、何があったら知らないけど、あの子、あなたがまたいなくなるんじゃないかって不安になってるのよ、きっと。優しくしてあげてね。恋愛には疎い子だから」

「はい……」


 課長はコーヒーを飲み干し、席を立った。