「あなたが出て行った時よ」


 進弥がハッカーだと発覚した時、真純は課長の命令で進弥を家から追い出した。
 それは真純にとって、進弥との永遠の別れを意味していたようだ。

 翌日に真純は、課長に家の鍵を付け替える事を告げ、目の前で携帯電話から進弥の番号とメールアドレスを消去したという。

 課長としてはそこまでは要求しなかったし、求めてもいなかった。

 なにしろ進弥の顔を知っているのは真純だけだ。
 ほとぼりが冷めた頃、外で会っていたとしても分からないのだ。


「私だったらウソついてまた拾っちゃうかもしれないけど、あの子、生真面目だから」


 そう言って課長は、笑った。

 完全に進弥との繋がりを失った真純は、すっかり元気をなくした。

 本人は平気を装っていたけど、課長には丸わかりだったらしい。