電話を握りしめて呆然とつぶやく進弥に、少女が呆れたように言う。


「もう。無視するから怒ったんじゃないの?」


 それなら、まだいい。

 進弥の胸に不安が広がっていく。


「オレ、帰らなきゃ」


 進弥が立ち上がると、少女も立ち上がった。


「うん。あたしも帰る」


 一緒に土手を降りて、コンビニの前で少女と別れた。
 反対方向に歩いていく少女を、少しの間見送った後、それに背を向け進弥は駆け出した。

 自分の態度に怒って電源を切っているだけなら、まだいい。

 だが、以前のように誰かに連れ去られて、連絡の出来ない状態にあるのだとしたら——。

 そうでない事を祈りつつも、胸の不安はどんどん膨らんでいった。