ところが、突然彼からキャンセルされたのだ。
 サークル仲間との花見の予定が入ったからと。

 自分の方から誘っておきながらドタキャンしてすまないと彼に平謝りされ、怒る事も言い返す事も出来ないまま、一方的に電話は切れた。

 夜桜見物をするからと家族に告げてきた手前、早々に帰るわけにもいかない。
 時間をつぶすために歩き回っていたら、おろしたての新しいサンダルでマメが出来るわで、なんだか情けなくなって泣いていたらしい。

 話を聞いた進弥は、思い切り大きなため息をついた。

 この世の終わりでも訪れたかというほど号泣していたから、何事かと思えば、実に些細なすれ違いだったのだ。

 酎ハイを飲みながら、ボソリとつぶやく。


「くっだらねー」

「くだらなくないもん! 久しぶりのデートだったのに! あたしの方が先に約束してたのに!」

「オレに怒ったってしょうがねーだろ」