少女は頬を膨らませて進弥を睨む。

 早生まれの進弥は先月二十一歳になった。
 十月生まれの真純とは、期間限定で年の差がひとつ縮んでいる事になる。
 それがちょっとだけ嬉しかった。

 少女はふてくされたように恨み言を言う。


「フンだ。三つしか違わないじゃない。二十歳前後の奴って、すぐ大人ぶるんだから。あいつと一緒」

「誰と一緒だって?」


 少女は俯いて表情を曇らせた。


「……あたしのカレシ」
「なんだ、そいつとケンカして泣いてたのか」
「違う。ケンカなんてしてない。けど……」


 なんとなく、この少女からは自分と同じ匂いがする。
 訊いてもいないのに少女は、泣いていた理由を語り始めた。
 そして進弥も、聞くつもりはなかったのに、なんとなく耳を傾けていた。