ずいぶん余裕があるように見えたが、演技だったとは思わなかった。


「じゃあ、あのパスワードもデタラメ?」

「あれは本物。ウィルスっていうか、イタズラプログラムを仕込んであるのは本当だから」

「イタズラって……」

「いかにもウィルスに感染しましたって感じのメッセージが、サーバに繋がれた全パソコンに表示されるだけ。起動するのは今日じゃなくて仕込んでから百日後。停止パスワードの受付ウィンドゥは毎日出るけど、五秒間だけだし、サーバのモニタをずっと見てる人なんていないだろうから、気付いてないんじゃないかな」


 それはおそらく、ハルコ経由で侵入した時の”後始末”で置いてきたのだろう。

 どうして危険を冒してまで、そんなイタズラをしたのか、理由が分からない。

 なので訊いてみた。
 シンヤは気まずそうに頭をかく。