とある神官の話






 確かに力があれば、すぐに解決出来ることは増える。指名手配犯に対抗出来るだろう。だが――――力だけでは駄目だ。
 力がすべてではない。
 私はそう信じている。






「結構古い派閥ですよ。あれでも今は人数が減ったようですが」

「……何か嫌な感じですね」

「彼らに喧嘩を売るような派閥…まあ派閥でも何でもないのですが、それがフォンエルズ枢機卿らです」

「ノーリッシュブルグの枢機卿ですよね、確か」






 あの双子がいるノーリッシュブルグの枢機卿。
 聞けば、「多分ハイネンらと同じ匂いがするでしょう」と苦笑する。ハイネンイコール変人というイメージを持っているため、ミスラ・フォンエルズ枢機卿もあんな感じなのだろうか……と考えてしまう。

 フォンエルズ枢機卿を筆頭に、ブランシェ枢機卿らもそちら側で、簡単にいうといつか裏を暴いて(潰して)やる!ということらしい。
 ちなみに私を危険だといったのも彼らだとか。





「それだけじゃないみたいですがね」







 列車が間もなく到着する、ということで改札を通る。「どういうことです」と聞いた私に、彼は座席に到着してから口を開いた。






「私にもわかりません。ハイネンやフォンエルズ枢機卿、父さんなら知っているかも知れませんが……」






 禁忌、禁止。取締の対象であることを、取締る側がやっていたなら―――。


 頭が痛むようなことばかりだ、とシートに体を預ける。
 少し寝ます、と言った私に「ええ」と返事。聖都まであと―――――。