とある神官の話







 アーレンスが「無理はするなよ」と私の頭を撫で、兄弟に言っておくと言ったかとに頷く。

 ハイネンはもう少し滞在するようで、レオドーラとも別れた。別件があるとかなんとかで「先に二人で戻って下さい」と言ったのだ。
 そうして、私はゼノンとともに駅にいるわけだが。






「新しい枢機卿が選ばれるとなると、他の枢機卿が仲間に引き入れるのに躍起になります」

「派閥があるとはいっても、ヒーセル枢機卿らをどうしてあんなに対立してるんです?」

「過激派、というんでしょうか」






 人並みに紛れて、列車を待つ。椅子には私を座らせ、向かいにはゼノンが立つ。荷物もまた彼が見ていた。
 列車がくるまでまだ時間がある。





「フィストラ聖国は歴史深い国です。国王時代から様々な研究がされてきて、今もそれは続いています。一部は神官を養成するさいにも学ぶことになっていますよね」





 宗教と関わりがあるこのフィストラ聖国は、昔国王が統治していた。それが教皇にかわって現在にいたる。

 歴史深ければ発見と同じくらい、その長い時の間に失われたものもある。それを研究している者も聖都にはいるのだ。勿論危険性が孕んでいるため、厳しい管理がなされるのだ。術式であっても危険だと判断されれば禁忌とされ、外部にもれないように管理している。
 闇術が禁止されているように、他にもいくつか使用、所持を禁止されたものもあるのは知られているだろう。


 一昔前に使えたものが今は禁止、というのが当たり前な現代。
 ヒーセル枢機卿側の一部は研究者もいるらしく、"よからぬこと"をしているのではとも囁かれるほどらしい。禁止されるだけの理由は必ず存在するはずなのだが、それでも探究心は尽きない。

 ――――だから、人体実験などというようなものに手を出す。





「"能力持ち"の犯罪も増えたなら、それに対抗できるように"力"を持つべきだ―――というのが彼らの言葉です」

「力だけをを持ったって、意味ないのに」