とある神官の話









 どんな人が好き?と聞かれても、私には答えられない。好き。好きって何だろう。痛い?苦しい?羞恥心?あたたかい?
 ちゃんと、考えなくては。
 彼に失礼だ――――。






「またやってるよ……」







 鍛練場には、新人神官がいた。今回は真面目に(?)ゼノンとレオドーラが付き合っているらしい。
 とくに"能力持ち"で、かつ珍しい"魔術師"の力を持つゼノンに興味津々らしい。あれこれ聞いているようで、その度にゼノンも答える。

 ああやって見ると、二人とも男なのだと実感する。体つき、体力、声の低さ―――女とは違う。
 声かけるのを躊躇っていると、神官の一人が「あ、フィンデル神官」と声を上げた。それに私も答え、近くに向かう。






「今回は真面目にやってるぞ!」

「今回はってなによ」






 たらいのあれがあるため、レオドーラがそういう。






「二人に用事があって。ちょっと時期が過ぎたし市販だけど―――」






 どうぞ、と包みを渡す。銀色のリボンがゼノン。黒に模様の入ったリボンがレオドーラだ。二人そろってそれをガン見し(何で)たため、何だか恥ずかしくなる。
 おおーという声がしたため、背後を振り返れば入口にバルニエルの神官。やじ馬らしい。

 あのロッシュ高位神官に"緑化"されるぞ!やら、レオドーラだから平気だろ?やら、いやいや銀髪兄ちゃんはどうなんだ?やら――――好き勝手に言っている。
 よし、追っ払おう。

 固まる二人をよそに、私は入口に向かう。そしたらぱっと抜け出てきたファーラントに少し驚いた。
 彼は鋭い顔のまま口を開く。





「聖都にあるお前の家が何者かに荒らされたらしい」