「ギブミーチョコレート!」
「いっぺん滑って頭打てば?」
「ひどっ」
待ち合わせた駅にて、私はうんざりとしていた。いつだったかロマノフ局長にいった気がするか、顔のいい人にろくな人かいない気がする「なによ」
店には「贈り物に甘いものを!」などと言った文句とチョコレートが見えた。
じっとこちらを見るのは、腐れ縁のレオドーラ・エーヴァルトである。少し早く出てきた私とばったり。ああ運がない!と嘆く私をよそに、彼は相変わらずだった。
「お前女だろーが」
「男尊女卑!アゼル先輩に言い付けてやる」
「ゴメンナサイスミマセン」
「よろしい」
時計を見れば、まだ時間がある。
朝早いからか外は刺すような寒さで、今は駅の中にいる。この時間でも人の姿は見える。
仕方ない、と溜息。
旅行鞄とは別に、身にはナナメ掛けの鞄を持っていた。財布などが入っている鞄である。そこから、そういえばと探って、手にとる「レオドーラ」
「ほらチョコレート」
「まじか!って板チョコ!」
しかもホワイト!
顔は女性と間違われるくらい整っているのに、行動がやはり男。しかも驚きかたがあれ。
サンキュー、とちゃんとお礼をいうから、まあよしとする。
――――ちょっと懐かしい。
まだ神官の見習いだった頃。
私は当時から人間関係が嫌だったから、一人で行動することも多かった。女の子ってめんどくさい。そんな私が親しくなるのは決まって、似たような人物だった。
私の学生時代というのは楽しい思いでのへうが少ない。
あれから今、だもんな……。
「あ、ハイネン」
入ってきたのはコートに身を包んだハイネンと、ゼノンがこちらに気がついた。で「おや二人とも早いですね」と笑った。
レオドーラはバルニエルに戻る形なのでほぼ手ぶらに近いが、聖都に住んでいる私たちはそうもいかない。
列車が来るので、ホームを抜けていく。乗り込むのはバルニエル行き。いつぶりだろう、と思う。
持ってやるよ、と私の荷物を持っていくレオドーラに、まあいいかと放っておく。それを見ていたらしいハイネンが意味深な笑み。そしてゼノンが「シエナさん!」と何故か勢いづいて私に声をかけた。


