まさかそんな、ねぇ。
私が混乱しているのを断ち切ったのは「へぶっしょん!」という間抜けな声だった。くしゃみ、らしい。
そういえば―――――。
私はあまり人を家に呼ばない。そもそも信頼できる友人がかなり少ないという理由もあるのだが……あまり好きじゃない。しかし、だ。
住所を調べたにせよ、来るには理由があるはずで。
再び扉を開けたら、彼は「よかった」と笑った。
「最近ブエナさんの所にも来ていないと聞いていたので、心配して、その、ブエナさんに住所を聞きました。申し訳ありません。決してその、ストーカーをして知っていたわけじゃないので!」
「はぁ……そうだったんですか」
「じゃ、私はこれで」
元気で良かった、といっただけで彼は再び雪の降る外へ出ようとした。何故かストーカーという部分を今回は否定していたのがちょっと気になるが、まあいい。
私は「ゼノンさん!」と声をかければ、彼は「何ですか?告白ですか?」とぬかす。違います、とちゃんと否定してから、私は続ける。
「時間があるなら、あがっていって下さい。体が冷えたまま帰ると"また"風邪ひきますし」
「えっ」
「嫌なら別に」
「そんなわけありません!ですが、いいんですか?」
「変なことしたら叩き潰しますけどね」
アゼル・クロフォード仕込みのそれは多少なりとも効果はある。だが―――、どうやらゼノンには一瞬らしい。雪を被りながら顔を赤く染め(何故)、しかも照れながら(だから何で)「お邪魔します」と入った。
私の家は土足ではない。玄関で靴を脱いでスリッパなどに掃きかえる。来客用のスリッパをゼノンに出して、ストーブの近くにあるソファーをすすめた。
そして私は来客慣れしていない。ティーパックで紅茶をいれ、持っていく「ここは」
「私の父の家で、父の亡き後は私が貰って住んでるんです。たまにアゼル先輩とかブエナさんが来るくらいで、殆ど来客はないんです」
「すみません。驚いたでしょう」


