とある神官の話





 女性が男性に告白する日、というイベントの日がある今月、告白はともあれ毎年女性からの贈り物がわんさかゼノン・エルドレイスに届く。
 エリート街道まっしぐらであるゼノンにはファンクラブが存在しており、そんな彼女らからチョコレートやらなにやらが届けられるのであるが……。
 ゼノンはというと、そういったものを受け取らない姿勢をしていた。にも関わらず山積みとなった贈り物に眉をひそめることになるのである。そしてそれは――――そんなイベントの香が店に漂い始めてから始まるのだ。つまり「もう山積みですか?」



「ああ……油断するとそうなるから、部屋を空けられない」

「でも今はクロフォード神官がいるんじゃねえのか?」

「あの人か助けてくれると?むしろ高笑いで見てる」

「……大変ですね、貴方も」



 ヘーニル・ロマノフ局長の元に来ていたランジットがうっかり泣いていいかと思っている頃――――――ー。

 ランジットが出ていった室内に残っていたゼノン・エルドレイスは物凄く不機嫌であった。朝から女性陣に追いかけられるようにしてやってきたのと、机にあった贈り物が原因である。
 ジャナヤの件で彼が参加したことも知られ、またまた女性らに声をかけられることが増えたのだ。どうせならシエナさんに……などと思う彼に、客人が来ていた。故にランジットが逃げた、といってもいい。

「厄介なことになったな」



 その言葉に、ゼノンが「そんなのいつものことでしょう」と返す。
 今、ヒーセル枢機卿がまた何か動いている。ヒーセル枢機卿だけではない。他にもまだいるだろう。
 部屋を訪れた客人、キースは紅茶に口をつける。



「アガレスに会ったことや、ジャナヤ。それの背後に何があるのか」

「アガレスの復讐という意味もよくわからない」



 復讐。彼は何のために?