とある神官の話




「友人があれこれ動いているから、あの子自身にまた何かあるとは思わないが――――レオドーラ・エーヴァルト」

「あ、はい」

「お前には聖都に行ってもらう」



 ……、何で聖都?



 ぽかん、としている俺を余所に、何やらロッシュは紙にすごい速さで書いている。あれれ、また嫌な予感。聖都に行くことに関しては別に嫌でもなんでもないのだが。
 そういやこの人、結構面倒見いいんだよな。
 書類なのか手紙なのかわからないそれを封筒に入れ、特殊な術をかける。あれは他者が読めないようにするためだ。



「聖都に今ヨウカハイネン・シュトルハウゼンがいるはずだ。そいつにこれを届けろ」

「ハイネンさんに?」



 ハイネンさんには会ったことはある。やや変わり者である彼に、これを渡せばいいのか。そう簡単にいくかね、と俺は思う。あの人はふらふらふらしているから。
 今から行くとか?と恐る恐るいえば、当たり前だと言われ「ですよねー」とうなだれる。休みなんて、な!

 ああさよなら俺の休み。
 それから女子から貰うチョコレート。ま、毎年残念な結果になるからもうどうでもいいのだが。

 へいへい、と俺は手紙をしまい込み退出しようとした「レオドーラ」



「気をつけろよ」



 ああこの人は。
 わかってますよ、と俺は返して部屋を出た。

 苦笑しながら俺はさて、と自宅へ戻る。旅支度をしなくては。