とある神官の話




 誰かに愛されたい。必要とされたい。憎悪より好意がいいに決まっている。遠いよりも近いほうが、他人より友人になりたい。
 近づくのも、離れるのもどちらも力がいる。しかし離れるより、近くにいるほうが、近づいて、わからないものをわかり、理解し合うほうが難しいのかも知れない「っ!」



「シエナさん」

「貴方は変わり者で、私に付き纏うストーカー予備軍です」



 ぐっと腕を掴んで、入口を抜けていく。外に出ると吐息も白く吐き出される。年明けたとはいえ、まだ冬だ。ひやりとした空気と、すれ違う神官らの目を無視し突き進んでいく。



「あの」



 ―――――狡い。
 宮殿から少し離れた場所だった。腕を離した私は、振り返らずにいた。
 私も狡い。貴方よりもずっと。

 もうこの際、諦めてしまおうかと思った。




「今まで通りで、いいんですよね。ストーカー予備軍としての貴方で」

「えっと」

「却下です。却下」




 まだ何も言っていません、というゼノンを私は無視。ストーカー予備軍なのは事実じゃないか。まだ"予備軍"という文字がついているだけマシであろう。
 あちこちで出没して、わざわざ危険なジャナヤに行くのまで参加して。馬鹿だ。私は彼の好意をはいそうですかと頷けない。まっすぐすぎて、どうしたらいいのかわからなくて。

 だが、と思う。




「せっかく話せるようにはなったんですから、その、今更距離を置かれても困ります」