とある神官の話






 どうしてこうなった。





「年末年始はお休みを貰えそうですよ。よかったですね」




 真横を歩いているのは、長身。ダークブラウンのコートをした男は、神官服ではなくネクタイ姿。上等な背広姿である。銀髪は結わえ、まるでどこぞの貴族。
 それが私の真横にいる、ゼノン・エルドレイスの姿である。

 何故こうなったか。

 それは私のせいである。私が、彼のいつもの冗談(多分彼は本気)に返してしまったのだ。祭日が終わったらデート云々と言ったゼノンに、そう、気が向いたらと言ってしまった。
 祭日は無事に済み、かつあのリリエフを倒したことが功績となるとかならないとか。何だか聖都に戻るのが怖い。"あの"リリエフですからねぇ、とにやついたハイネンを思い出した。
 溜息が出そうになる「そういえば」




「演劇のチケットはどうしたんです?」




 そう。彼の所謂デートに付き合うこととした私は、行き先を聞いて驚いた。
 彼は、調度今やっているハリベヌス一世の演劇を見に行こうといったのである。

 宮殿で聞いた、ハリベヌス一世の話から日にちはたっていない。そんな急に取れるものなのか。今時期の観光で人気らしいその演劇を見に行くのは良いのだが……。