とある神官の話




「この間、腕を吹き飛ばしてくれたお礼をと思って」

「――――」





 "魔術師"の能力を持つ者は、言葉や思考、文字で力を発動させる。一つだけに特化した能力持ちとは違う。なら、何だって出来る。
 ラッセルは炎を、ヨハンは氷や水を操る。彼らの戦闘は、短いとは言え見た。大丈夫。
 リリエフは笑う。




「死になさい」




 無数の槍。それを右に走るが回避しきれない。防御!というよりはその槍を反転させ、リリエフへ。
 リリエフがいた街頭に直撃。耳障りな金属音を響かせて落下。リリエフは跳躍し、上空で両手を奮う。――――幻術!


 呑まれる闇。


 再び目をあけると、赤。私は一人、真夏のような太陽の日差しの中で立つ。赤はむせ返るような匂い。
 転がるそれは、まるで人形のように見える。だが、誰だ。私は手を伸ばす。お前が。誰? お前が、お前が殺した。お前が!お前が!

 ぎろり、と目だけがこちらを見た。

 ―――――化け物め。