とある神官の話



 腕を掴まれ、壁へと押し付けられる。痛む背中。はっとした時には遅く、両腕をとられ、すぐの距離には、赤い髪。

 ―――――ヤヒア。





「君、ミノアで会ったね。やっぱり君だったか」

「っ」

「おおっと。意外にお転婆?」




 足を上げようとしたが、あっさり回避。いや、回避ならばまだよかった。

 ヤヒアは足と足の間を割るように、己の足を押し込める。かなり、まずい。冷や汗がでる。彼はふふ、と笑う。まずい。本当にまずい。
 これだけ異性に接近したことあったか?―――――じゃなくて。





「味見もいいかもね」

「っ!」




 耳元で囁かれたことで、反射的に目をつむる。馬鹿か自分。目をつぶるな!と思った時には遅く、落下。例えるなら床が急に無くなった感覚だった。どきりとする前に、床に転がる私は咳込む。

 何があった。悪寒。間近と迫った槍を咄嗟に両手を前にだし「守れ!」と展開、破壊する。気づいたのは、宮殿の外だということ。
 夜なので昼間より気温が下がり、吐息を白くさせる。