とある神官の話




 な、何で笑うんた!
 恥ずかしくなって立ち上がり、「へ、部屋に戻ります」と逃げる。

 顔に出やすいのは、なんとかしなくては。今までそんなことはなかったのに。やはりキャリアが違うのか。とくにハイネンは私の三倍近く生きているのだ。観察力があるのは頷ける。

 ただ能力だけあっての凡人である私と、そもそも位置が違うのだ。




「あぁもうっ」




 ぐちゃぐちゃだ。
 もどかしいような。それをどう言葉にすればいいのかわからない。胸の奥に手を突っ込んで取り出したい気分。カルシウムでも足りないのか?

 廊下を歩きながら、思う。

 目まぐるしく何かがあって、それをどうにかしようとすればするほど、空回りする。無力だなと感じてしまう。それは、苦しい。痛い。
 ヒューズ副局長が亡くなってから、尚更だ。私、何してるんだろう。どうしたらいいのかわからない。マニュアルなんてない。私が、どうにかしなくてはならない。経験。何事も経験、か。




 溜息をついた私は、ゆっくりと足を進めた。





  * * *