とある神官の話





「ふん。あのハゲ共め」




 ぞわっ。

 声を発した方から殺気。アゼルだった。相変わらずだなあと思いつつ、どういうことかと疑問。ラッセルが「女って怖ぇ……」と。

 枢機卿とはいっても、全く関わりがないからわからない。しかも知っているとすればブランシェ枢機卿くらいだし。話されていることは、私にはよくわからないことばかりだ。
 置いていかれても仕方ない。




「あのミスラが野放しにする訳がないだろうな……ご愁傷様」



 ミスラって、ミスラ・フォンエルズだよな。会ったことがないが、会話を聞いていると凄そう。
 心底可哀相に、という顔をしたラッセルに一同頷く。どんな人なのか「うん?」




「どうしました?」

「あ、ああいえ。フォンエルズ枢機卿ってどんな人なのかなあと」

「あー、なんつーか……」





 俺パス、と投げ渡したラッセルにアゼルが「一言なら毒舌大魔神」と。

 私の中のミスラ・フォンエルズ枢機卿が物凄い姿となっていく。かなり近寄りたくない。
 ユキトであるから見た目は良いほうらしいが、毒舌大魔神が引っ掛かってならない。どうやら私は凄まじい葛藤をしているのが顔に出ていたようで、ハイネンが「ぶふっ」と吹き出した。