とある神官の話





 それでも殺人は四件おき、その一つはリリエフであろうもの。

 私はココアを手に、さてどちらのソファーに座るか悩んだ。それに目敏く気づいたゼノンが「さあこちらへ!」と言ったが無視。一人がけのソファーへ腰を下ろす。その残念そうな顔は見なかったことにする。

 こんなときまで変人全開なのはもう呆れるしかない。まあ、ハイネンも変人全開であるのだが「それで済めばいいが」
 真面目なラッセルの言葉を、ハイネンがぶち壊す。




「ああ嫌ですねえ。本来なら親しい友人や恋人の一人や二人で団欒してるはずなのに」

「おいおい。どっから突っ込めばいいんだよお前」

「いいかいシエナ。あんな変態達には気をつけるんだよ?」

「は、はあ……」




 向かいの一人がけのソファーに座ったアゼルが力説する。あきらかにゼノンのハイネンに向けてだった。
 曖昧に頷く私。

 明日行われる祭事は、三日間のうちで最も緊張感がある。それは実際祈りを捧げるハイネンにも負担はかかるはず……なのだが、本人は緊張していないように見えた。ハイネンならば心配はないだろう。


 聖都から流れた禁書は、本としての形を保っていないというのが厄介になっていた。本の内容がでたらめでも、その本自体に力が宿って禁書となったものもあるのだ。回収しきるのは難しい「ミスラが言っていましたが」




「聖都でも一部不穏な動きが見られるようになったそうですよ」

「枢機卿か?」




 ええ、とハイネンは頷く。