とある神官の話







 私が先程やろうとしていたことを、アゼルは躊躇なくやってみせたのだ。
 私は、なにを。

 疲労でそのまま動けない私に、アゼルが笑う。



「何だか出世してるようだね、シエナ」

「出世?まさかそんな……」




 何が出世なのか。

 まわりがすごい人だらけなのだ。私はただの、神官。力はあっても使いこなせない。悔しかった。腹立たしかった。


 少量の血液摂取で、ハイネンの顔色がいささか変わった気がする。腕を外したアゼルに、レスティが治癒術をかける。

 傷口が塞がったのを確認したアゼルが「おいヨハン」と呼び付け、応援を呼び付けるような声。あれ、と思ったときには暗転。シエナさん!?というレスティの声が遠く、遠くに聞こえた。




  * * *




 ―――――疲れた。



 まどろむような睡魔。意識は何となく浮つき、揺らめく。起きなきゃ、そう思う。だが起きたくない。私は疲れた。


 少し前まで、私はただの神官だった。聖都にいて、ブエナの孤児院に顔を出すような、そんな神官。鳴かず飛ばずで、そんなのいくらでもいる普通の神官だったはずで。少し違うのは私が"能力持ち"であり、"魔術師"の能力持ちであることくらい。
 そんな私がエリート街道まっしぐらな秀才、ゼノン・エルドレイスと話すようになり――――いろんなことがあった。いろんな人に会った。

 私は、はっきりいって苦手なのだ。いろんな人と話すのが。怖い。
 許容量を超えてしまったのだ。