とある神官の話




「っお前は」

「久しぶりだな、リリエフ。相変わらず趣味の悪い格好をしているじゃないか」

「アゼル・クロフォード!」



 リリエフが後方へ退避。
 久しぶりに聞いたその名前に、私は顔を上げる。こちらを見ないが「会いたかったよシエナ」と。
 高位神官の中でも、女性である彼女は私の先輩でもあり、信頼できる人――――アゼル・クロフォードその人だった。




 ヨハンに抱えられ私はレスティがいるほうへ。着地し下ろされ、ヨハンは戦闘体勢をとる。
 リリエフが苦い顔をしていた「また貴様か!」




「あんな"子供騙し"、どうにでもなるけど?」

「っ」



 失った右手と負傷。リリエフは唇を噛む。だが油断は出来ない。アゼルは視線をそらさず、恐怖で動けない民間人の前に立つ。
 表情を歪めたリリエフが動いた―――――が。まるで煙のように消えうせた。そこにあるのは激しい出血のみ。アゼルの緊張感がやや和らぐが、こちらのレスティは必死だ。
 ラッセルの意識はない。ハイネンもまた重症だ。
 詳しいことはあとで、とアゼルはいうと、ぱしぱし、と容赦なくハイネンの頬を叩くものだからぎょっとした。




「おい変態。生きてるんだろ」

「し…………つれ……いな」

「黙っていろ。仕方ないから分けてやる」



 アゼルが短剣で腕を切る。そして、流れ出る鮮血を、ハイネンの口へと持って行き、強引に押し付けた。
 嚥下。
 ラッセルの腹部の傷を癒したレスティが「強引ですね……」と漏らす。