「冗談じゃない」
「―――なに」
怖い。震えているわよと哄笑。似合わない笑いかたね、と言ってやれば、刃に力がこもる「確かに」
「私は知らないことばかり。何故なのかって思っても上からの指示なのだから、下っ端は従うしかない。けれど」
人を傷つけて、殺していいっていうものじゃない。
練っていた術が、間近で発動した。防御術をかけてある己は吹っ飛ぶくらいで済むだろう。だが、向こうはそうはいかない。「ぎゃあああぁあ」と悲鳴が響く。
簡単にいえば破裂させたのだ。そして、逃げられないように拘束術を。吹き飛んだ腕が地面に転がる。女の顔には傷。
咳込みながら続けて腕をふる。だがそう簡単にはいかず。
「おのれ!」
速い!
そう思った時には遅く。右腕を失ったままのリリエフが、左で私の首を掴み、壁に押し付ける。足は地についておらず、視線の下にはリリエフが青白い顔をさらす。
「やってくれるなぁ。女」
「っ……!」
「苦しい?でもいいじゃない。もう楽になれば。悩まなくて済むわ。どうして?どうして私はってねえ!」
やばい。かなり。
視界が暗くなってきた。リリエフが笑う。あれ、何してるんだっけ。このまま?嘘、このまま私――――。 死ぬかも。そう思った。
だが、私の視界は闇に包まれることがなかった。かわりに「黙れ阿婆擦れ」という、やたら頼りがいのありそうな鋭い声。激しく咳込み酸素を取り入れる私に「大丈夫か?」というのは、ヨハンだ。
奥にはレスティが見え、ハイネンとラッセルを確認していた。
何故、貴方が?


