とある神官の話



 意識は、あった「冷た……」

 そこは、やや街中から外れている場所に見える。体の下には白。雪が一面に広がり、本来のノーリッシュブルグの姿がそこにあった。だが、白は赤に染まっている。
 戻ったのか。
 視界には倒れ込むラッセルと、ハイネン。どちらも深手、いや瀕死に見えた。




「ど、すれば」




 二人の傍にいる私。ここはどこかわからない。助けを呼ぶまえにやることがある。

 "いつかくる選択を躊躇うことなかれ"


 ヒューズの墓に行ったときに、先客から言われた意味深な言葉。何故また思い出したのかわからない。選択?何を馬鹿な。ラッセルとハイネンどちらか選ばなくてはならないというのか?
 "どちらか"だなんて。私はわがままなのだ。

 ――――私はどちらも選ぶ。


 不吉な言葉を振り払う。

 "魔術師"は、"能力持ち"の中でも最も珍しいとされる。様々な分野に至るからだ。なら、と私は考える。
 ヴァンパイアであるハイネンは、よっぽどでなければ死ぬことはない。血だらけではあるが、傷口はふざがりつつある。問題はラッセルのほうだ。
 ラッセルの傍により、呼び掛けても反応はない。

 出来るか?





 やらなければ。

 出血している傷口に手を当てる。塞ぐ。傷口。出血を止める。助ける。何度も何度も口に出す。何度も、何度も。
 淡い光が集まり、傷を塞いでいく。これでもだいぶ違うはずだ。

 塞ぎ終え、次にハイネンを見る。



「ハイネンさん」



 衣服は破れ、体は冷えていく。開かれた唇から覗く尖った牙はやはりヴァンパイアかと思う。怖い?まさか。ハイネンはハイネンだ。さんさん照りの晴れにはミイラ男になるような男。変人。