とある神官の話




「向こうで、血を見ました」

「血?」




 指差すのは、広場のほう。女性はそこで、地面を染める赤色を見たという。血液みたいだったと。
 幻術ならばわざわざ血の演出をする必要があるだろうか?わからないが、一番考えられるのは――――ハイネン。彼は怪我をしていた。そう。レスティと一緒ならよいのだが……。

 確認するために私は女性とともに広場へと向かう。

 雪のないノーリッシュブルグの街は、冬しかしらない。それに土地勘もない。女性に度々聞きながら広場へ向かうこと数分。開けた土地。




「――――これは」




 むせ返る、というのだろうか。
 確かに女性のいう通り血だ。あちこちに見えるそれだけで、かなりの量だとわかる。護身のために刃を持ち進めば、石畳が破壊されている。何があったのか。

 背後に女性を、前を、横をと確認しながら進めば影。そこには血だまり。そして投げ出された四肢「ハ、ハイネンさん!」

 駆け寄れば、足元の血だまりが跳ねる。腹部から出血。




「しっかりして下さい!」

「………シ……さん?」

「ええ私です。誰が、何が」




 パニックになった。

 赤。赤赤赤赤赤。知り合いが死ぬ。ハイネンが。まさか。また?また知り合いが?僅かに聞こえた声に、ハイネンの首が動く。伸ばされた腕が、私の腕を強く掴んだ。