とある神官の話




 レスティが「どうするんよ」と。
 確かににそうだ。

 幻とはいえ、ここで死ねば現実でも死ぬ。怪我を負ってもそれは同じだ。なのでシエナが怪我を負ってなければ良いのだが。見たところ双子は大きな怪我はない。




「とりあえず行くぞ。馬鹿共はともかく、シエナは見つけなくては」




 可愛い可愛い後輩なのだ。

 ――あんな変人にくれてたまるか。






  * * *







 何処まで歩いたか。

 街は相変わらず。あの黒いゼリーが出てきたらと警戒しながら進む。人はいない。リリエフとかいう能力持ちの仕業らしいが、ここから出るにはどうしたらいいのか。

 痛みや疲労はあるのに、空腹や生理的現象に襲われることがない。まあそれはそれでいいのだが。
 さすがに、なあ。
 己に防御術をかけ、あてもなく歩く。ハイネンやレスティに会えればいい。怪我をしていたハイネンは大丈夫なのだろうか……。


 何故。
 平凡に聖都で過ごしていたはずなのに。何故。いや、神官なのだから仕方ない。けれどこんな、大きな何かに巻き込まれるだなんて。

 ―――――怖い。

 はっきりいえばそう。私なんかはただ"魔術師"という珍しい能力の持ち主というだけで、こんな大きな問題をどうこうできる力などない。必死に奮い立たせてきたが、怖い。