とある神官の話






「愛されたいのよね?誰かに傍にいて欲しい。愛してよと叫んでも、誰も来ない。実に悲劇的だわ。焦がれるものは手に入らずすり抜ける。貴方は枯れて諦めで終わる」



 女は楽しんでいるようだった。うっとりするような声。
 私は何処にいるのかわからない。意識だけがぼんやりとそこにある。女の声は妖艶であるのに、不愉快。叫びたくなるが声をどうだせばいいのかわからない。



「仕方ないわ。だって貴方――――傷だらけだものね。"それ"は一体何を守ったのかしら」

「っ……」





 痛い。
 燃えるような痛み。突き刺さるそれは確かに私を貫いた。女は笑う。何のつもりなのか。私は。私は。

 飛び起きるようにして目覚めた。そこには先程と変わらない、雪のないノーリッシュブルグの街中。しかも広場だ。開けた場所に私は転がっていたらしい。あちこち痛む体に短く呻く。

 近くを見渡しても、人の姿はない。

 あの黒いゼリーが襲ってきて、私は"落ちた"。それをハイネンが手を伸ばして……。ならハイネンは落ちたのだろうか。
 目に入る範囲にはいない。別の場所か。ともあれ。




「移動するか」




 ここからどうすれば出られるのかわからない。そしてまたあの黒いゼリーが襲ってくるかも知れない―――――不安だった。不安と焦りしかない。

 私は"異能持ち"の、"魔術師"だ。大丈夫。なんとかなる。いや、なんとかさせる。