「甘いね」
「!?」
胸。熱い、と思った。視線をずらせば、自らの胸を貫通する刃。刃の先からは赤い色が垂れて、地面に落ちる。耳元に寄せられた唇が「かわいそうにね。ラッセル・ファムランは無実なのに」
何を、という前に口から血を吐いた。鈍い音をたてて刃が引き抜かれる。衝撃。
男は顔が崩れていく。まるで溶けるように。そこから現れたのはくすんだ金髪ではなく、燃えるような赤い髪。ヤヒアだった。
「ちょっと顔や見た目いじっただけで騙されるんだね」
「お……まえが」
「まあ長くは保たないけど。僕の術じゃないし」
指先に燃える炎を弄びながら、ヤヒアはヒューズの傍らに立つ。ヒューズはすでに意識が混濁しはじめていた。
このまま、死ぬのか。
ヒューズは僅かに動く手を、己の血につける。そして、地面にむかって滑らせていく――――――すまない。
小さくヒューズは謝る。ヤヒアが再び彼に視線を向けたときにはそれは発動していた。
空高くに浮かんだ術陣。
それはぐにゃりと曲がって、あちこちに飛散していく「やってくれるねえ」
あれは、連絡。そして他にも何かあるだろう。ヤヒアは短く舌打ちをし、外套を翻した。


