とある神官の話





「シエナだってそうじゃないの」



 なにを。



「エルドレイスさんとか」

「違います」

「ふうん」





 にたにた顔のブエナ。絶対信じてないな、と私は再び否定する。

 あこがれがないわけではない。私も一応女だ。二十歳すぎた女だし、考えないわけもない。むしろ考えなくてはならないだろう。
 恋愛、か……。





  * * *





 聖都から列車で半日、そこからまた乗り換えて……。その村に着くまで丸一日かかるとみていい。
 近くにはノーリッシュブルグという街がある――――ノータムの村だ。

 聖都からみて北方に位置するその村に魔物が出た。それだけならノーリッシュブルグにいる神官が出るのだろうが、と私は吐息を漏らす。そう、確かにノーリッシュブルグから神官は来たのだ。だがこれでは……。
 一面銀世界。この時期ならば雪が降ってもおかしくはなかったが、と村人と神官が協力して雪掻きをしているほど積もるなど。やはりおかしい。先に入っていたノーリッシュブルグの神官からの連絡の通り、これは何かある。