指名手配。運が悪すぎる。私は二人の背中越しに見える男を見た。
顔がはっきりわかる距離まで、ヤヒヤと呼ばれた男が接近してくる。ランジットは今すぐにでも飛び出せる体勢をとっていた。
「やはり貴方でしたか。趣味の悪い」
「そうかな?粋だと思うけどなあ」
「何処をどう言った粋になるのやら」
燃えるような赤。赤だ。それは一瞬にして燃え上がり、ヤヒアの周囲で渦巻く。彼は能力持ちなのか。だとしたらさらに厄介だ。
指名手配されていて、何年も捕まらない者はたいてい何かしら"訳"や"理由"がある。彼もその一人なのか。とにかく、危険な相手だということは間違いない。泣きたくなる。だがそんな余裕はない。
ランジットが走る。居合。掠めもせずヤヒヤは避け、屋根へ。
今日はやたら見上げる機会が多い。そう冷静さを取り戻しながらああ、と理解した。魂呼びをしたのは、彼なのか。思えば先程、「あれが犯人とは思えない」云々ハイネンがランジットと話していた気がする。
屋根へとのぼろうとしたランジットが静止。それもそうだ。ヤヒアの前に出されたのは、神官。


