とある神官の話





 ―――――何かひっかかる。


 破片のことを神官に任せたまま、私はランジットとハイネンの会話を聞いていなかった「―――つまり」





「彼は人間の女性を愛していたんでしょう。だが人間とヴァンパイアが当時良い関係でなかったことを考えれば、女性はヴァンパイアに、彼は人間に殺されたのではないかと」

「成る程な」





 時間はすでに夜中というよりは、夜明けが近いといったほうがいい。空の色が変わりはじめた。
 冷えきった体のまま、沈んだ気分はどうしたものかと小さく溜息。

 行方不明だったハイネンも無事であったし、事件も解決したとも言える。聖都に帰れる。今度こそ休みでもとりたい
 あまり活躍してなかったが、と私はランジットとハイネンに続いていた――――のだが。
 



「―――――ですが。シエナさん?」





 "あれは"、何だろう。

 何か寒気というか、気配がした。気のせいならそれでいい。だが、私は振り返った。影。人影だ。

 ―――――目。

 まるで金縛りにあったときのようだ。動かせない。何か練ろうとして、飛散。すぐにハイネンとランジットが気づいて、私の前に立ちはだかる。視界か途切れ、私は力が抜けるように膝をおとした。あれは、何なんだ?