とある神官の話





「目覚めた時、何人かがいた。男と女だ。"時が近い"と言っていたが私にはわからん」




 男の手が力を失い、地面に落ちそうになるのを私は、反射的に掴んだ。ぱきり、とまた何処かでひびが入る。




 時?
 聞き返したランジット。ハイネンはまだ黙っていた。
 まわりに控える神官もまた、動かずそこにいた。





「"時は来た。再び我らは復讐を遂げる"と。そして私と、他の何体かが動かされた。お前は知っているだろう?」

「貴方と会ったときの"貴方"は、別人でした。あれは"影"なのでしょう」

「私にはあまり記憶が残っていないから、何も言えない。悪いな、同族よ。もう時間だ」

「いいえ。貴方こそ、"貴方が再び友とし、愛する者と再会できることを私は願う"」





 瞳にあった光が、徐々に薄れた。微かに動く唇が「ふた、たび会う……なら、彼女が、いい」と紡いだのが最後。

 私が掴んでいたいた手が、砕ける。手の平から高い音を立てて地面に落ちていく。魂は――――消えた。そこにあるのはただの"器"であり、陶器の破片のみ。
 複雑だった。




 いや、待て。