とある神官の話




「大丈夫ですか?」

「……終わったのか」

「いいえ。貴方が最後のようですよ。なので教えて下さい」




 何を?
 攻撃的だった男が一変。ハイネンの普通に会話していることに、私とランジットが顔を見合わせた。

 ハイネンが片膝を地面につけ、戦闘不能となった男の傍へと寄った。ランジットもまたそのまま見守るが、わからないという顔をしている。私もわからない。




「お前は」




 ランジットと同じように私も見守っていたのだが、目が合った。声をかけられた私は、おそるおそる傍へ寄り、膝をつく。
 男に敵意はない。




「懐かしいな」

「えっ」

「"彼女"も、人間であったが不思議な力を使っていた。見事だ」





 残るほうの手が伸びた。人の手も冷たい時があるが、温もりを確かめるように冷たい、滑らかな手が頬を滑る「私は彼女を守れず、あろうことか私と同族の者の手によって殺された」

 ――――男が生きていた時、古い魂だとハイネンは言っていた。もしかしたらまだヴァンパイアが人間から疎まれていた時代の者かも知れない。
 魂呼びは神官もたまにやる場合があり、私も立ち会ったことがあるが、妙な気分だ。