私はバタバタと廊下を走った。

新1年生は毎日交代で生徒会室の掃除をしていた。

広くないので当番は1人で充分だった。

ペーパーモップをかけて、

机の上とホワイトボードを水拭きするだけだと聞いていた。

生徒会室は北校舎の4階にあった。

階段を駆け上がり、ドアの前で息を静めた。

「はぁ、ふぅ。」

ロングの三つ編みが少し乱れた。

私はコンコンとドアをノックした。

「どうぞ。」中から声がしたので開けた。

「失礼します。お掃除にまいりました。」

「遅いな。入りなさい。」

「はい。」

「名前は?」

この人が生徒会長?ちょっと怖い。

縁なしメガネが透明すぎて、掛けてないかと思うくらいにピカピカだった。

切れ長の目がじっと私を見ていた。

短めの黒い髪がサラサラだった。

私はうらやましいなと思った。

色が抜けてくせ毛で結ばないとふあふあしてしまう私の髪とは

正反対の彼の髪に見とれた。

「どうした?気分でも悪いのか?」

「い、いいえ、1年B組山口桃です。」

「部活はどこ?」

「英語クラブです。」

「ミス伊藤は君には甘いらしい。モップはそこにある。始めなさい。」

「はい。」