巫女と王子と精霊の本




―――――――――――――――
――――――――
―――――




『ここに来てから何百年もの月日がたった。私は…ここで何を待っているのだろう…』




ハミュルはあのハミュルの花が咲き誇る丘で大空を見上げていた。



私には記憶がない。
でも、何かを待っている。
約束をしたんだ…いや、どんな約束をしたんだったのだろうか…?
それすらも、思い出せなくなってしまった…




『こんにちは……』




声が聞こえた。
懐かしいような、美しい鈴の音のような声だ。



振り返ると、黒髪に、白い衣を纏った少女がいた。


―ドクンッ


心臓が大きく脈打ったような気がした。


『君は…………』



どこかで会っただろうか?
私を知っているのだろうか?
私がなぜ見えるのだろうか?




色んな疑問が溢れ、その後の言葉が浮かばなかった。




『寂しい…よね…』


少女は悲しげに私に語りかける。


『そうだね、私は一人だから…。帰る場所もわからない…』


そう、私はここから動けず、どこにも帰れない。
いや、買える場所なんてないのかもしれない。




『……あなたは一人じゃない。愛されていたし、帰る場所もあるわ』




少女は私の頬を優しく撫でた。
今まで誰も私に触れることはおろか、視界にさえ映らないのに、この少女は簡単に私に触れることが出来た。




『あなたを迎えに来る。だから……待っていて…』

『もう、行ってしまうの……?』


少女に手を伸ばす。
少女は温かかった。この温もりももう消えてしまうのか…



『あまり、離れていると、世界に支障が出るから。でも信じて…必ず、迎えに来る…』



その言葉を残して、少女光となり消えていった。