巫女と王子と精霊の本



「あ……」


その笑顔に胸が締め付けられた。


あ……もしかしてその人は…
”死んじゃった”のかもしれないと悟る。


『そんな、顔をしないでお嬢さん。もう、452年も前の話さ』



よ、452年!?
信じられない!そんな、前から……


「ね、ねぇ…。死んだら普通天国とかに行くんじゃないの?」


『てんごく?それが何かはわからないけど、生を終えてもなお、ここに居続けているのなら、私にはここに何かやり残したことがあったんだろうね」


やり残したこと………
でも、それをこの人は覚えていない。
それじゃずっと、このままここに居続けるのかな…


長い時を、ひとりぼっちで…


ひとりぼっち……
不意に一人で親の帰りをまつ幼い自分が頭をよぎった。



そう、私の記憶。
ひとりぼっちで孤独だったあの、時間。



「探そう……」



そんな孤独を思い出したら、そう口にしていた。


『え……?』


声は戸惑っているみたいだった。


「記憶、探そう!そしたら、きっと何かが変わるはすだよ。ひとりぼっちでいるのは寂しいから、あなたも待つだけじゃなくて動きださなきゃ!」



『……でも、どうやって…。452年以上も、ここにいたが、何も思い出せなかったんだ。いまさら…』


そうだよね、手がかりもない。
方法だって私にはまだわからない。
でも……



「なくしたたまでいいの?孤独なままでいいの?452年前って年月を細かく覚えてるくらいに寂しかったくせに…」


『……それは……』


「大切な人だったんでしょう?」



孤独な時、初めて言葉を交わせた人がいた。想いが伝え合える…そんな人が現れた。


孤独から救い出してくれたその人はきっと、この人にとって大切な人だったに違いない。